月が波に揺れる、その姿は・・・・
ガラスのように透明で、そこはかとなく明るくて、確かな闇がそこにある場所。
それは夜空。
人の香りのしない海岸で、まだ暖かい砂に腰を下ろす。
夏の夜は、体の境界をぼんやりさせてくれる。
子供達のように瞬く星と、枯れた黄色の月。
金色の垂れ幕は、彼方水平線から続く道。
そこは波の音が騒ぐ場所。
時と同じ、二つとない形が生まれては消えていく場所。
やがて騒がしさは曖昧になり、心地いい生命のリズムが五感をそっと撫でる。
哀しみが心に溢れ、涙で世界が霞んでしまうように。
今宵の月は、優しくその姿を波に映す。
少年はその世界に、真実の世界を・・・・
”Fly Me To The Moon”
この歌を知る前から、僕はこの歌を好きだった気がする。
それは中学1年、ひょんなことからこの曲を聞いた時だった。
歌詞すら聞きとれず、ただ流れるメロディーとして、でもそれは昔から感じていた哀しみの答えを知っていた。
何度も思い、誰にも話した事もなかった心の内を、初めて外から聞いた気がした。
月が波に揺る、その姿は、涙を流した心の形。
そこは今ここに存在する証明の地。
だから時には感じたくなる。
その時は
”Fly Me To The Moon”
”私を月に連れてって”
この歌を始めて聴いてから、8年が過ぎた頃。あるライブハウスでこの歌を聞いた。
とあるバンドに演奏されていたそれは、色々な気持ちと、そして夏の砂浜を思い出させた。
泣きそうになること。
それは、すでに泣いているのだと思う。
今宵のこの歌は、今の僕には重たくて、気持ちが一杯になってしまう。
目をつぶり音に揺れると、体がその場から消えてしまったように思えた。
思いっきり泣きたかった。
新宿まで歩き、そしてタクシーで家に帰った。
そうして今、こうしている。
この気持ちを書き残さなきゃと思ったから。
スポンサーサイト